あたらしき人よ

朝、妄りの池に揺蕩ふ人よ

醒めよ老いたる淫者、其の矛を収めよ

さあラジオ体操が始まる
急げ千代田の公園へにっぽんの朝へ
アサダアサダヨアサヒガサワグ
さあ元気よくー
ラジオは叫ぶ いちっにっさんっ

あたらしき人よあたらしき一日よ

あたらしき血よあたらしき太陽よ
あたらしき言葉よ出でよ
あたらしき聖句で語れ
 
  あっ雨が雨がおちてきました

雨体操はやめないぞ
アメフレフレカラカサレンコオト
もっともっと背筋伸ばして
もっとちぢんで跳ねて跳ねて跳ねて
跳んで跳んで雨の朝、賓の輪にこそ死なめ

雨があがった町へでた
ペンギンの服を着て
ペンギン歩きで
江戸の町をゆく
見たことがあるぞこの町は
通りに水が浮かんでいる
舟が流れている
この厩は
いつか見たことがある
五十年前にいちど見たことのある女が
舟に乗っている
「ホテルに子供を置いてきてるのよ」女は言う。
「だからきょうは帰らなきゃならないの」
うん、だから去らなければならない

わたしたちはみんなあの漢の駅へ帰らなくてはならない

「夏の夜の十時半」
重ねてきた徒労の言葉を埋めて
しずかに眠れあたらしき言葉の舟で行け

傍らで瞑想している女の為に矛をたてよ
聖なるアシアの女の為にめざめよ狛犬よ


      *マルグリッド・デュラスに影響をうけている

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